シーグラスは近年人気が高まる一方で、人工的に加工された「フェイクシーグラス」も数多く流通しています。
では、本物はどのように見分ければよいのでしょうか。
シーグラスに関する情報発信や研究を行う国際的な団体、International Sea Glass Association(ISGA)では、本物のシーグラス(Genuine Sea Glass)を見分けるための特徴をいくつか紹介しています。
もちろん、すべての個体にすべての特徴が現れるわけではありません。しかし、多くの本物には、長い年月を海で過ごした証が刻まれています。
今回は、その代表的な5つをご紹介します。
① Cマーク(打撃痕)
海が刻んだ「本物の証」
波に運ばれたシーグラスは、何十年もの間、海中で岩や石と衝突を繰り返します。その衝撃で生まれるのが、アルファベットの「C」のような三日月型の打撃痕です。ISGAでも、本物を見分ける重要な特徴として挙げられています。
人工的なフロスト加工(艶消し加工)で、この自然な衝撃痕を再現することは非常に困難です。特に丸い形をした「シーマーブル」では、球体ゆえに四方から衝撃を受けるため、このCマークが美しく現れる個体が多く見られます。

② ハイドレーション(失透現象)
海が育てた柔らかな表情
本物のシーグラス最大の魅力とも言えるのが、この乳白色の質感(フロスト)です。
長年海水にさらされることで、海水との化学反応によりガラス表面のアルカリ成分などが溶け出し、極めて薄い変質層が形成されます。
この現象を「ハイドレーション(Hydration/水和反応)」、または専門用語で「失透(しっとう)現象」と呼びます。
光を柔らかく拡散させるこの質感は、機械的なサンドブラスト加工だけでは完全には再現できません。
③ エッジの自然な丸み
時間だけが作れるフォルム
割れたばかりのガラスは鋭く危険ですが、海の中では、波に転がされ続けることで少しずつ角が削られ、優しい丸みへと変化します。
本物のシーグラスには、「均一すぎない丸み」「場所によって異なる摩耗(まもう)具合」など、自然ならではの個性があります。逆に人工加工品は、全体が均一に削られすぎている傾向があります。
④ 天然のピッティング(微細な凹凸)
顕微鏡で見ると分かる世界
本物のシーグラスの表面には、肉眼や顕微鏡で確認できるほどの小さな穴や凹凸(ピッティング)が見られます。
これは、長年の化学的な風化と、波や砂による摩耗が重なって形成されたものです。こうした微細な打撃痕や、長年にわたる化学的風化・摩耗が積み重なることで、独特な凹凸が形成されます。
光にかざすと小さな陰影が現れ、独特の深みを生み出します。人工加工では全体が均一な曇りガラスになりやすく、この自然な凹凸はなかなか再現できません。
⑤ 自然が作る「世界に一つだけの表情」
個性は海が育てる
本物のシーグラスは、「摩耗の具合」「フロストの濃度」「透明感」「Cマーク」「ピッティング」のすべてが一粒ごとに異なります。それはまるで指紋のように一つとして同じ物は存在しません。
長い時間をかけ旅を続けてきたガラスだからこそ生まれる個性です。
シーグラスはただの「すりガラス」ではありません。
それぞれが数十年、ときには100年以上もの時間を海で過ごし、波や岩、砂と共に旅を続けてきたのです。小さなCマークも、フロスト状の柔らかな表情も、表面の細かな凹凸も、そのすべてが海の歴史を物語っています。
当店(evening calm)では、そうした自然が育てた痕跡を大切な魅力と考え、店主自ら採集したコレクションの中から、美しいフロストや自然な風合いを備えた個体を厳選してご紹介しています。
一粒ごとに異なる表情は、海が長い時間をかけて刻んだ唯一無二の記録です。
ぜひ、光にかざしながら小さなCマークや繊細なフロストにも目を向けてみてください。そこには、人の手では決して作ることのできない、海だけが育んだ長い物語が息づいています。
そして、その物語を感じてみてください。



